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公式サイト(※音が出ますので御注意)
貰ってきたチラシのアオリ文句に
天才作曲家セルゲイ・ラフマニノフのあの‘不滅の名曲’誕生秘話が、今明かされる──とあったもので、勝手に「んまぁ! ラフマのピアコン第2番誕生感動秘話なのネ! それじゃ是非とも観に行かなくちゃだわ!!」と鼻息も荒く意気込んで観に行きましたら(その割には公開されてから一ヶ月以上経ってるけどな……)、想像してたのとかなり違ってました。
確かに曲が書けなくなったラフマニノフが精神療法を経て立ち直る場面はあるんですけど、「新しいピアノ協奏曲が書けた! 有難うダール先生、あなたにこの曲を捧げます!」とかそんな場面は無いんですよねー。
たぶん監督はそういったものは描きたくなくてその辺りの盛り上げどころはあえてさらっと流したのだと思いますが、「誕生秘話」を期待する観客としてはやっぱりちょっと「あらら〜そこ流しちゃうんだ?」と考えてしまいました(笑)。
それはともかく、ラフマニノフの半生とそれを彩る三人の女たちに監督独自の解釈を絡めて描いた「ラフマニノフ幻想」と云える映画で、ロシアでの革命後にアメリカへ亡命したラフマニノフの現在と回想が交錯する構成となっています。
ただ演奏者としてのみ必要とされること、十年間に一曲も作曲できないこと。
演奏者としてのみ師に認められ、作曲を禁じられながらもなお創作をせずにはいられないこと。
ラフマニノフの現在の苦しみ苛立ちと過去の挫折や傷心が絡み合い、彼と彼の音楽に関わることになった女性たち。そして謎の贈り主からラフマニノフに届けられる彼にとって特別な意味合いを持つライラックの花。
伝記的な作品ではないのでその辺を期待すると肩すかしだと思いますが、個人的には好きなタイプの作品だったので大画面で観られて良かったと思っています。
ええ、何と云っても画面がたいへん美しかったので!
劇中での現在の1920年代アメリカの華やかさも良いのですが、回想シーンのロシアの風景の美しいことと云ったらもう。
おそらくはラフマニノフの回想の中で美化されている演出なんでしょうけれど、ライラックの咲き誇る庭を走るセルゲイ少年のシーンを観られただけでもお金を払った甲斐がありました(それもどうなのか)。
セルゲイ少年と小さなナターシャの出てくる庭の場面は静止画にしてポスターにしたいほど愛くるしかったですよ。
と思ったら、撮影は「ククーシュカ ラップランドの妖精」でもお子たちをこよなく愛くるしく撮ったアンドレイ・ジェガロフ氏だそうで。道理でお子たちが可愛くて緑が美しく撮れている訳だー。
ただ、非常に残念なことにジェガロフ氏は昨年42歳の若さで亡くなったそうです。
ああこんな素晴らしい才能を持つ方の映像がもう観られないなんてなぁ……(落涙)。
この映画のラフマニノフの人生において重要な役割を持つのは、「交響曲第一番」を捧げられた蠱惑的な人妻のアー・エーリことアンナ・ロディジェンスカヤ、従妹でありラフマニノフを生涯支え続けた妻ナターシャ、革命思想に賛同する女子学生マリアンナの三人ですが、アンナとナターシャの描き方は良かったものの、マリアンナとの関係にはちょっと唐突さを感じました。編集段階でいくつかエピソードを切っているのかな。
予告篇にあったマリアンヌの「彼は音楽しか愛せないのよ」って台詞は何故なくなってしまったのでしょうか……って編集の都合なんでしょうが、マリアンヌだけが知っていたセルゲイの一面を窺わせる台詞だと思うのでかなり残念です。
その他にもかなり端折っている場面があるような気がしてなりません。
師匠であり育ての親でもあるズヴェレフ先生やダール医師、スタインウェイ社のフレッドとの関係のエピソードはかなり切っている箇所が多そうな印象。
特にナターシャの婚約者だったダール医師についてのフォローがないからすっごく気になってるんですけど!
(本筋とは関係ありませんが、ダール医師がラフマニノフに催眠療法を施す場面で、千秋の飛行機恐怖症を治すのにのだめが催眠術を使っていたのを思い出しました。このエピソードからアイディアを得たんですかね二ノ宮先生)
色々と解決していないことが多々あるにせよ、降り注ぐ雨がラフマニノフを祝福するかのような余韻の残るラストはとても良かったと思います。
音楽好きな方は是非とも大画面で観て戴きたい映画です。
観終わった後の率直な感想としてはラフマニノフの天賦の才能と人としてのダメダメ度が見事に比例してたよな!ってことでしたが(笑)。