日々雑景
本や漫画や映画の感想に購入本のメモと雑記など

観たい映画

「ホット・ファズ」(※音が出ます)は7月5日公開。
あーなんかワタクシの大好きなアホの匂ひがぷんぷんしますヨ……(笑)。
白鳥への妙なこだわりもナイス!
楽しみだな☆


ラフマニノフ ある愛の調べ (2007年 / 露)

公式サイト(※音が出ますので御注意)




貰ってきたチラシのアオリ文句に
天才作曲家セルゲイ・ラフマニノフのあの‘不滅の名曲’誕生秘話が、今明かされる──
とあったもので、勝手に「んまぁ! ラフマのピアコン第2番誕生感動秘話なのネ! それじゃ是非とも観に行かなくちゃだわ!!」と鼻息も荒く意気込んで観に行きましたら(その割には公開されてから一ヶ月以上経ってるけどな……)、想像してたのとかなり違ってました。
確かに曲が書けなくなったラフマニノフが精神療法を経て立ち直る場面はあるんですけど、「新しいピアノ協奏曲が書けた! 有難うダール先生、あなたにこの曲を捧げます!」とかそんな場面は無いんですよねー。
たぶん監督はそういったものは描きたくなくてその辺りの盛り上げどころはあえてさらっと流したのだと思いますが、「誕生秘話」を期待する観客としてはやっぱりちょっと「あらら〜そこ流しちゃうんだ?」と考えてしまいました(笑)。




それはともかく、ラフマニノフの半生とそれを彩る三人の女たちに監督独自の解釈を絡めて描いた「ラフマニノフ幻想」と云える映画で、ロシアでの革命後にアメリカへ亡命したラフマニノフの現在と回想が交錯する構成となっています。
ただ演奏者としてのみ必要とされること、十年間に一曲も作曲できないこと。
演奏者としてのみ師に認められ、作曲を禁じられながらもなお創作をせずにはいられないこと。
ラフマニノフの現在の苦しみ苛立ちと過去の挫折や傷心が絡み合い、彼と彼の音楽に関わることになった女性たち。そして謎の贈り主からラフマニノフに届けられる彼にとって特別な意味合いを持つライラックの花。
伝記的な作品ではないのでその辺を期待すると肩すかしだと思いますが、個人的には好きなタイプの作品だったので大画面で観られて良かったと思っています。
ええ、何と云っても画面がたいへん美しかったので!
劇中での現在の1920年代アメリカの華やかさも良いのですが、回想シーンのロシアの風景の美しいことと云ったらもう。
おそらくはラフマニノフの回想の中で美化されている演出なんでしょうけれど、ライラックの咲き誇る庭を走るセルゲイ少年のシーンを観られただけでもお金を払った甲斐がありました(それもどうなのか)。
セルゲイ少年と小さなナターシャの出てくる庭の場面は静止画にしてポスターにしたいほど愛くるしかったですよ。
と思ったら、撮影は「ククーシュカ ラップランドの妖精」でもお子たちをこよなく愛くるしく撮ったアンドレイ・ジェガロフ氏だそうで。道理でお子たちが可愛くて緑が美しく撮れている訳だー。
ただ、非常に残念なことにジェガロフ氏は昨年42歳の若さで亡くなったそうです。
ああこんな素晴らしい才能を持つ方の映像がもう観られないなんてなぁ……(落涙)。


この映画のラフマニノフの人生において重要な役割を持つのは、「交響曲第一番」を捧げられた蠱惑的な人妻のアー・エーリことアンナ・ロディジェンスカヤ、従妹でありラフマニノフを生涯支え続けた妻ナターシャ、革命思想に賛同する女子学生マリアンナの三人ですが、アンナとナターシャの描き方は良かったものの、マリアンナとの関係にはちょっと唐突さを感じました。編集段階でいくつかエピソードを切っているのかな。
予告篇にあったマリアンヌの「彼は音楽しか愛せないのよ」って台詞は何故なくなってしまったのでしょうか……って編集の都合なんでしょうが、マリアンヌだけが知っていたセルゲイの一面を窺わせる台詞だと思うのでかなり残念です。
その他にもかなり端折っている場面があるような気がしてなりません。
師匠であり育ての親でもあるズヴェレフ先生やダール医師、スタインウェイ社のフレッドとの関係のエピソードはかなり切っている箇所が多そうな印象。
特にナターシャの婚約者だったダール医師についてのフォローがないからすっごく気になってるんですけど!
(本筋とは関係ありませんが、ダール医師がラフマニノフに催眠療法を施す場面で、千秋の飛行機恐怖症を治すのにのだめが催眠術を使っていたのを思い出しました。このエピソードからアイディアを得たんですかね二ノ宮先生)



色々と解決していないことが多々あるにせよ、降り注ぐ雨がラフマニノフを祝福するかのような余韻の残るラストはとても良かったと思います。
音楽好きな方は是非とも大画面で観て戴きたい映画です。



観終わった後の率直な感想としてはラフマニノフの天賦の才能と人としてのダメダメ度が見事に比例してたよな!ってことでしたが(笑)。




ライラの冒険 黄金の羅針盤 (2007年 / 米)

ワタクシにしては珍しく初日に行ってきました。


都内の大きい映画館で観ましたが、初日に加えて映画の日さらに土曜日の効果なのかほぼ満席。すっげえ!と否が応でも期待が高まると云うものです。
実際、期待に違わぬ出来でありました。
一点を除いては完璧だと断言しても良いと思います。



キャスティングは主役のダコタ・ブルー・リチャーズ嬢をはじめ、イメージぴったりでもう文句無し。
特にダコタ嬢の演技は素晴らしかったです。おてんばでこまっしゃくれてて癇癪持ちで。うわ〜、ライラそのものじゃん!と思わず画面に釘付け。
画面に釘付けと云えば、ニコール・キッドマン演じるコールター夫人も凄かったです。
毒を含んでいるからこその美しさ華やかさはこの人でなければ!と思わせるほどのはまりっぷり。
やんわりと婉曲ながらも有無を云わせぬ台詞廻しにはもうメロメロでした(笑)。
TPOに合わせたお衣装チェンジはもっと観たかったくらいです。
アスリエル卿を演じたダニエル・クレイグはちょいと地味かなという印象がありましたが、実際動いて喋ってると実に良いんですよね。もっと見せ場が欲しかったほど。
リー・スコーズビーは自分が想像していたよりもだいぶ年齢が上の俳優さんが演じてらっしゃいましたが(個人的にはなんか40代くらいのイメージがあったんですよ)、渋くてなかなかステキでした。
俳優陣についてはこれくらいにして(笑)。
美術面も完璧ですね。
CG合成で何が凄かったって、人間とダイモンが同じ画面にいて全く不自然でないところですよ。
特殊効果としては地味なのでしょうが、かなりの技術を要するんだろうなと感心していました。
街の場面の合成やクマたちの戦闘シーンなども勿論凄いですけれど、華やかな見せ場だけでなく舞台世界に地道ながら強固な説得力を与えている点に何より好感を持ちました。


絵面的には文句のつけどころがない映画でした。
ライラを載せたイオレクが雪原を駆けるシーンなどは何度も眺めていたくなりましたよ。
画面の華やかさの満足度は非常に高いです。




以下ネタバレを含みますので未見の方及びいらぬ情報を仕入れたくない方は御遠慮下さいませ。





パンズ・ラビリンス (2006年 / スペイン・メキシコ)

公式サイト


1944年、スペイン。
オフェリアは臨月の母親と共に義父の待つ山奥の駐屯地へと向かっていた。仕立て屋だった実の父の死後、母カルメンはフランコ軍のビダル大尉と再婚したが、オフェリアは母親の体よりもお腹の子供のほうを気にかけている大尉にどうしても親しみを覚えることができなかった。
駐屯地での生活は快適とは云い難いものの、大尉の小間使いメルセデスはオフェリアを何かと気にかけ、ふたりの間には温かい交流が生まれていく。
ある晩、母親と眠っていたオフェリアの元に妖精が現れ、家の庭の奥にある迷宮へと誘う。そこで彼女を待っていたパン<牧神>はオフェリアに驚くべき言葉を告げる。彼女は魔法の王国のプリンセス、モアナの生まれ変わりだと云うのだ。
かつてのままのプリンセスであることを証明する為、オフェリアはパンから三つの試練を課される。満月の夜が来るまでに三つの試練を乗り越えられれば、父と母の待つ魔法の王国へ戻ることが出来るのだ。
オフェリアはパンから与えられた本に導かれて試練への道を歩き出すのだが……。





独裁政権下のスペインを舞台に、苛酷な現実の中にいる少女が美しい幻想の世界に慰めと避難場所を見出すような話なのかな〜とか思って観に行きましたが、全然違ってました。
現実逃避な貴種流離譚とかそういった甘っちょろい話ではございません。わかりやすく楽しいお手軽ファンタジーとは一線を画する作品でした。
この作品が凄いのは現実と幻想の絡め方ですね。対照的ではなくかなり密接に絡み合っている印象でした。映像に関しては幻想世界の方が美しさが多めではありますけど、悪夢めいた場面の闇の部分やグロテスクさは現実世界の酸鼻な光景とも張ると思います(歴史的な背景を考えるとより一層陰鬱な気持ちになりますが……)。
物語の進行に従って現実世界と幻想世界の両方が苛酷さを増していくんですよ。どっちに行っても逃げ場が無い。主人公は常に追い詰められています。
ファンタジーを構成する要素は作品の様々なところに巧妙に配置されていますが、演出にホラーやサスペンスの手法が使われているせいか、観ているこちらにも逃げ場が与えられないのです。もういたたまれないのなんのって!(涙)
オフェリアを襲う悲劇の嵐には、いやもうこの辺で勘弁してやって下さいよ頼むから……などと思いながら観ていました。
彼女の周囲の人々も色々大変なんですが、子供が痛々しいのは観ていてやっぱり辛いので。


多くの血で贖われたものの重さと、現実の中の幻想(特に共同幻想)について考えさせられた作品でした。
観る方によってラストの解釈は違うでしょうが、個人的にはあのラストは非常に良かったです(ちょっとリンドグレーンの作品を連想しました)。凄く好き。
オフェリアは決して無力で不幸な「かわいそう」な少女ではなく、見事な戦いぶりを見せた勇敢な少女で、最終的に彼女は救いではなく正当に勝ち取った場所を得たのではないかと思ってます。
昨今の安っぽいつくりの「ファンタジー映画」とは全く異なるこの映画が「ファンタジー」と呼ばれるのはファンタジーファンにとっては喜ぶべきことなのではないかと思います。


ワタクシ的には非常にお薦めなのですが、観る人をかなり選ぶ映画だよな……。
痛い・つらい・悲しいのが駄目な方はトラウマになるかもしれないのでやめておいた方が無難かも。






DVDメモ

英国ものばっかし(苦笑)。



プリンス~英国王室 もうひとつの秘密~
ミランダ・リチャードソン ジーナ・マッキー マシュー・トーマス
B000UVXHZY



発売元特集ページ




エリザベス1世
ヘレン・ミレン ジェレミー・アイアンズ ヒュー・ダンシー
B000UVXI0I



発売元特集ページ




クィーン<スペシャルエディション>
ヘレン・ミレン
B000UVXHSQ




英国ものついでに。
「マナーハウス」の廉価盤が出るそうですよ。
これはレンタル店にも入荷するのかな?
スペシャル盤は高くてちょっと……と思っていた方は是非この機会に
ミスター・エドガーのステキさをじっくり堪能してくださいネ。(←そこか)


B000UYGC8AMANOR HOUSE(マナーハウス) 英國発 貴族とメイドの90日 【3枚組】
趣味
ジェネオン エンタテインメント 2007-11-09

by G-Tools





聖杯伝説 (1978年 / 仏・西独・伊)

聖杯伝説

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エリック・ロメール監督作品。
ヌーヴェルバーグとかさっぱりわかってないワタクシですが、お名前だけは存じ上げておりますー。


この作品は、以前に受けたアーサー王関係の公開講座でちょっとだけ観たことがあって気になっていましたが、当時は他作品込みのBOXセットの販売しかなかったのでした(涙)。
で、今回バラ売りが可能になっていたので購入してみました。
どうせ田舎のレンタル店には絶対に入ってこないだろうしね……(云い訳ですよそうですよ)。


この映画はクレチアン・ド・トロワの韻文物語『ペレスヴァルまたは聖杯の物語』を原作としています。
主人公はペレスヴァル(英語だとパーシヴァル)の冒険と遍歴に聖杯伝説が加わったもので、韻文物語の味わいを損なわずに映像化したためか、長篇映画としての盛り上がりはなく、個々のエピソードが緩やかにつながっているような仕上がりとなっています。
だもんで、体調が万全でないと途中で寝てしまうかもしれません。
白状しますと、ワタクシは寝不足の時に観て30分くらいで熟睡しました(笑)。気がついたら特典のメイキング映像が流れてたよ……。


舞台を意識したであろうセットや中世の写本や19世紀あたりのロマン派の絵画を模したような美術や衣装は本当に素晴らしいです。
女性の衣装が美しくて観ていて楽しかった〜。
男性の甲冑は鎖帷子で、馬上試合の場面もあります。
使われている音楽が古楽風でナレーションが歌になっていたり、俳優の方々も自分のことを三人称で語ったりと、台詞(朗誦)と歌(合唱)を巧みに使った語りが印象的でした。演出そのものが演劇的と云いますか、映画でこういう手法ってアリなんだなぁ!と30年ほど昔の作品を観ていて思うのも何か間が抜けておりますな……。しかし、昔の映画を今観ると意外に斬新だったりすることもありますからね。


題材が題材だけに話にメリハリが無さ過ぎたり話が唐突に飛んだり(ラストには受難劇が挿入されてますし。しかも騎士姿よりもキリスト様姿のが似合ってたよ主役の人)するので、興味のない方にはお薦めしませんが、アーサー王関係に興味がある向きは是非。騎士物語や聖杯伝説のエッセンスを目で見て楽しめる点では貴重であり面白い作品だと思います。
あ、フランス製作なだけに騎士と貴婦人の恋愛描写は結構甘めかも(笑)。
無骨なイメージで描かれがちに思えるゴーヴァン(ガウェイン)もこの作品ではとても優雅な騎士でございました。
純粋だけれども無作法なウェールズ人ペレスヴァルとの対比を際立たせる為なのか、原作そのものがそうなっているのか、はたまた演じた方の器量によるのかわかりませんけども、マロリーあたりのイメージとは全く違いますね。
しかし、ゴーヴァンのエピソードは唐突に終わってしまうのでエスカヴァロンの姫君(ゴーヴァンは彼女の父親を殺していたのですが、お互いその事実を知らずにふたりは恋に落ち、陪臣からその事実を暴露されてびっくりと云う展開)とはどうなったのか激しく気になるよ……。




映画「ライラの冒険」公式

こちら

いやもう云いたいことは色々ございますが、とにかく早く来い来春! うおりゃああ!!!(←とりあえず雄叫び)
つーか、ワタクシ的にはニコール・キッドマンのうっつくしさにもう今からメロメロですよ先生!(←誰ですか)



原作も久々に読み返したくなりました☆




オンライン書店ビーケーワン:黄金の羅針盤 上巻オンライン書店ビーケーワン:黄金の羅針盤 下巻 オンライン書店ビーケーワン:黄金の羅針盤



春の映画メモ

今月末から来月にかけて観たい映画のリストを作っておったのですが(→これ)犬が出てくる映画以外はほっとんど殺伐とした雰囲気のものばかり。
……精神状態を反映してるんでしょうかねぇ(落涙)。
いやだって、「ブラックブック」にはセバスチャン・コッホが出るんだもん!
コッホさんの出演作にはハズレなしなんだもん!
コッホさんの出演作が一年に2回も封切られるなんて奇蹟のような出来事なんだもん!!
……っていい歳こいた女が「もん!」とか云ってんじゃありません(セルフツッコミ)
ええ勿論「善き人のためのソナタ」も素晴しかったですヨ!(もういい)



それはともかく、「ボンボン」(※音が出ます)は去年からずっと楽しみにしておったので公開が決まって非常に嬉しいです〜☆
味のあるおっちゃんと犬!! むっはー(興奮)



サンキュー、スモーキング (2006年 / 米)

公式サイト




タバコ研究アカデミー広報部長のニック・ネイラーは一日1200人を殺す業界の顔。「情報操作の王」の異名を取る彼は、ハリウッドのスーパー・エージェントと手を組んで映画とタバコのコラボレーションを図ったり、すべてのタバコのパッケージにドクロマークをつけようとする上院議員と火花を散らしてみたりと、健康志向のマスコミと世間を煙に巻くべく日々奔走している。
ところが、何者かに拉致されたニックは二度とタバコを吸えない身体にされ、さらに大人の関係を楽しんでいた女性記者ヘザーには業界の内輪話をすべてすっぱ抜かれてしまう。
絶体絶命の危機に追い込まれて自信喪失するニックは果たしてこのまま敗者として社会の片隅で生きていくことになるのか、それとも巻き返しはあるのか……?




まずはオープニングがタバコのパッケージを模したもので、そのセンスの良さに脱帽。


「話し出したら止まらない、知的論争エンタテインメント」というキャッチコピー通りの映画でした。
ニックを見ていると、「交渉術」ってのはまさに「口渉術」なんだなぁと感心してしまいます。舌先三寸で相手を丸め込んでしまう 納得させてしまう弁舌の鮮やかさには惚れ惚れと云うよりは呆然でした。
が、その喋りが必ずしもプラス方向にだけ働かず、足をすくわれて大スキャンダルに発展してしまうんですな。まさに「口は災いのもと」という諺の通りだ(笑)。
そんなニックを魅力的に演じていたのがアーロン・エッカート。個人的にはこの方の出演作は「抱擁」(この作品ではアーロン・エックハートと紹介されていました)しか観ておりませんが、とても愛嬌がある人ですよね。
今回の役ははっきり云って世間的には憎まれ役の筈なのに、彼の持つチャーミングさのせいで愛すべきキャラクターに仕上がっています。やり手でありながらちょっと抜けたところがあるのがイイ!(笑)
そして、ニックの魅力をさらに強めているのが息子ジョーイとの関係。
仕事のできる男として息子に尊敬されていて、内向的な息子を導いていける父親としての顔がこれまた良いんですよ。ふたりの間の信頼関係がきちんと描かれているので、ラスト近くでジョーイがニックにかける言葉も説得力が感じられます。ニックの弁舌が華麗だとするなら、ジョーイの弁舌は重厚なイメージで、将来は父親を超える才能を発揮するのではないかと想像してしまいますよ。
才能と云えば、ジョーイを演じたキャメロン・ブライト君は凄く巧いなぁと思っていたら、「記憶の棘」に出ていた子なんですね。こちらも機会を見つけて観なくては。


仕事や周りの人たちとの関係、そして選択の自由とそれに伴う責任について、ユーモアと皮肉を交え、堅苦しくなくそれでいて真面目に語られている作品だと思います。
あと、これだけタバコタバコと連発されているのに喫煙シーンがひとっつもないのにはびっくりでした! 
難を云えば、タバコ業界のニック、アルコール業界のポリー、銃製造業界のボビー・ジェイで結成されている<モッズ特捜隊>(※「死の商人」Merchant of Deathの略)の喋りをもっと楽しみたかったのですが、話の進行には直接関係無いからカットされちゃったのかな。その点はちょっと残念〜。




クリムト (2006年 / 墺・仏・独・英)

公式サイト




1918年、ウィーン。
脳卒中で倒れた画家クリムトは死に瀕していた。華やかだった経歴をよそに、彼の病床を見舞うのは弟子のエゴン・シーレのみ。
朦朧とした意識の中で、クリムトは自らの過去を辿って行く……。


1900年、パリ。
保守的なウィーンではスキャンダラスとされたクリムトの裸体画が万博で絶賛され、金賞を受賞する。彼を祝う晩餐会の余興の映像でスクリーンに映し出された女の姿にクリムトは一目で心奪われてしまう。レアと名乗るその女と引き会わされたクリムトは大使館の書記官に導かれて彼女と密会し、乞われるまま彼女の肖像画を描くことになるのだが……。





クリムトの絵と19世紀末ウィーンの雰囲気を合わせて映像にしたらこんな風になるのだなと思わされた作品。
何と云っても映像が綺麗でした。絵画的な画面に対する意気込みと細部の表現への執着すら感じさせられましたよ。場面場面が絵のように美しくて、静止画にして飾っておいても良いくらいでした。
衣装も世紀末ウィーンのモードを残しつつ、ちょっと現代的なアレンジも加えてあって目の保養でしたし、雪の質感や舞い散る金箔などの演出も良くて、美術スタッフの執念が見事に結実して素晴らしかったと思います。

で、肝心の内容の方はと云えば。
観にいく前は幻想的な伝記作品なのかなーと思っておりましたが、違ってました。
良く云えば謎めいた雰囲気に満ちた作品、悪く云えば脈絡が無い。加えて、アングルとカメラワークが時折前衛的過ぎて目が回りそうになりましたよ(笑)。物語に関しても、クリムトが執着する謎の女レア(クリムトにとってのファム・ファタル)や、クリムトの行く先々に出没する書記官(カフカっぽいイメージがあって彼の描写は結構好きなんですけど)のシュールさが加わって、話の主軸がよくわからなくなってしまいまして。とりとめがなくつかみどころがなく、クリムトが死の床で見た夢とシーレの現実はどのあたりで境界線が引かれているのかもよくわからないんですね。師の後を追うようにしてシーレもまもなく亡くなるので、生の側よりも死の側の方に踏み出しているからその境界も曖昧で、おそらくそれは製作者側が意図したものなのでしょうけれど、ワタクシにはちょっとレヴェルが高過ぎました……。
クリムトを通じて死と芸術の不条理を描いた作品であると云うのならば、その点では間違いなく成功しているとは思います。
クリムト(もしくはマルコヴィッチ)とウィーンのプロモーションビデオとしては非常に良い出来だったと思いますが、映画として楽しめるかと問われれば頷くことは致しかねます(笑)。
いやワタクシはマルコヴィッチ好きなんで観にいって良かったと思ってますけどね!
もうとにかくマルコヴィッチの声が好きなんで、紳士的に喋っていたり罵倒していたりするシーンを観ているだけでも楽しめました☆
実際のクリムトとはかなり違った人物描写になっているかと思われますが、この映画での繊細さが感じられる芸術家としての造形はかなり好みです。ま、マルコヴィッチが演じているからという個人的な贔屓目もあるかもしれませんけどね。
しかし、重要なパートナーであったエミーリエ・フレーゲ(劇中ではミディ)とはプラトニック関係を維持しつつ、他所には庶子が何人もいるし、正体のわからない女(実在しているかどうかも怪しい)を追い求めてしまうって、いったいどれほど屈折してんだかなぁこの人は。
そう云えば、官能的なシーンが多い割にはマルコヴィッチの玉の肌の露出が殆ど無かったことも不満な点として挙げられるでしょうか(笑)。女体があれだけ満載なのに(いやもう見飽きるほど出てきましたよモデルの女性のハダカが。皆さんアトリエの中とか全裸で歩いてますもん……)、クリムトは脱がないんだよね。ちぇー。(←何を期待しておるのか)
あと、エゴン・シーレの役のニコライ・キンスキー(この方はナスターシャ・キンスキーの弟なんですね)の手がとても綺麗でしたが、非常に不審な動き方をしていたことが印象に残っちょります(おい)。





19世紀末ウィーンの空気と芸術的な雰囲気(同時代の芸術家ロダンやミュシャの名前は出てくるし、レアとの密会シーンではホイッスラーの絵が出てきてましたし、カフェのシーンでは哲学者ウィトゲンシュタインが喧嘩してますし)は満喫できますんで、あの時代がお好きな方にはお薦めですよ〜。ただし、話の筋はあって無きがごとしと覚悟して下さいませ(笑)。



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