日々雑景
本や漫画や映画の感想に購入本のメモと雑記など

桃色トワイライト (三浦しをん)

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『桃色トワイライト』
三浦しをん 著、太田出版 刊


引越しをしたり、おかしな漫画のタイトルから妄想力の翼をはばたかせてみたり、イチローと松井の対談を見て、妄想を働かせながらもふたりの才能について分析してみたりと相変わらず妄想炸裂のエッセイ集でございます(笑)。
さて、前作で三浦さんの爆愛の主な対象はヴィゴ・モーテンセンでしたが、今回のターゲットはオダギリ○ョー。大河ドラマ「新選組!」から始まったその愛は「仮面ライダークウガ」で完成されます。
御本人の言葉によれば、
 二〇〇〇年に放映されたこの番組を、いまごろみてるのなんて、もしや私ぐらい……? と、どうしても出遅れ感をぬぐえないが、周回遅れで先頭に立ったということで(?)、大目に見ていただきたい。オタクの辞書に、「流行に乗る」とか「時流に乗り遅れる」とかいう言葉はない! 自分の心が熱くたぎった時が「流行まっただなか」であり、俺を巻き込み押し流す、時を選ばぬ熱き奔流こそが「時流」なのだ!
(同書 P150 「時流に反していまさらへんしーん!」より引用)


おおう、素晴らしきかな熱きパッション!
この精神は是非にとも見習いたいものであるなぁと非常に感銘を受けましたですよワタクシ。
その「クウガ」ですが、まあ色々な意味で凄いそうでして(一言で要約すると「五代くんと一条さんの愛のメモリー」だそうな)、どれほど凄いのかと云えばツッコミ上手の三浦さんがツッコミ疲れてしまう程(笑)。
ここでも妄想力全開のトークが繰り広げられてはおりますが、作品の分析もなかなか鋭いので、未見のワタクシもちょっと興味を惹かれてしまいました。いやDVD全巻揃えたりはしないけどね!
この後のオダ○ョーへの熱き思いは「壊れゆく私たち」で披露されます。佐藤浩市ファンの友人Hさんとの掛け合いは白眉(?)です。


三浦さんのエッセイを読んでいると、妄想と煩悩は人生を豊かにするスパイスなのだなぁとしみじみします。利かせ過ぎるのもちょっと考えものですが(笑)、楽しい生活を送る為の必需品だと思えば万事OKって事で。
あ、今回も爆笑必至なのであまり人前では読まぬほうがよいかと思います〜。絶対噴き出しますから!

簡単に断れない。 (土屋賢二)

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『簡単に断れない。』
土屋賢二 著、文藝春秋 刊


笑う哲学者、土屋賢ニ氏のエッセイ集。
云わずと知れたお茶の水女子大学の教授(哲学)にして、現在は学部長もお務めだそうな。
そんな土屋教授の思春期はこのような感じだったそうです(奥付の著者略歴より引用)。


15歳のころは、矛盾した社会や大人に反発し、盗んだバイクで暗い夜のとばりに消え、16歳のときには、瀬戸内地方を中心に勢力を誇る暴走族の一大組織「突血夜★喧慈」の総頭をつとめる、という夢を抱きながら自転車通学をしていた。


おお、何とセキララな過去の告白なのでしょう!(笑)
このような少年期が現在のスバラシイ業績に繋がっているのですね。
そんな土屋教授のヴィジュアルはと云えば、自らをして「お茶大のベッカムだ」と云わしむる程。
ただちょっと違うのは、サッカーの腕とルックスぐらいだそうで(笑)。
このように自らに対して謂れの無い自信を持つ事が現在の業績に(以下略)。

さて、哲学者たる土屋教授は日々様々な問題に頭を悩ませています。
パソコンを買い換えるべきなのかどうか、尊敬されないためにはどうしたらいいのか、恋愛の必勝法とは、勤務先に行くにはどのような方法をとるべきか(陸路、空路、海路、四次元ワープなどの方法や、亀戸・ウラジオストック経由など)、理論で幸福になる方法などなど、どうでも良いようなことばっかし…いやいやいや、深遠かつ永遠のテーマたるに相応しい事柄ばかり。
哲学とはかくも奥深い学問であるのかと先生の著書を読むたびに(笑い)涙が滲んで参ります。
皆様も人生に迷った時には是非お読みになられると良いかと存じます
(きっと答えが見つかる…かどうかは知りませんけども)。
ところで、エッセイ集の何冊にも渡って言及されている棚の修理でございますが。
そろそろ棚上げはやめにして、抜本的な改革に乗り出した方が宜しいのではないかと思いますけどどうでしょう(笑)。

酩酊混乱紀行 『恐怖の報酬』日記  (恩田陸)

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『酩酊混乱紀行 『恐怖の報酬』日記』
恩田陸 著、講談社 刊


恩田陸さんの初めてのエッセイ集。
「地○の歩き方」を思わせるエスプリ(?)の利いた装釘にノックダウンされて購入。いやはや何とも素敵な遊び心ですなぁ〜。大好きだこのセンス。


恩田さんの著作は何冊か読ませて戴いておりまして、そこから著者に対してワタクシが抱いていたイメージは、本(※漫画も含む)と映画と音楽が好きな物静かで賢い方ってなものでした。
しかし、この本を読んで認識を改めましたよ。ここまでノリツッコミが上手い方だと思わなかった!(笑)


飛行機嫌いの作家、恩田陸氏がイギリスに旅立つまでの涙ぐましい苦悩と恐怖の日々が綴られている前半部分は抱腹絶倒です。
何が面白いって、飛行機が離陸するまでに60ページ近くかかってるんですもの。 現地に到着するまでこんなにページを割いた旅行記って初めて読んだよ(笑)。
御本人にしてみれば笑い事ではないのでしょうが、読んでるこっちはもうおかしくてたまりません。
一番笑ったのは離陸時の恩田さんの心情を切々と語った箇所。(以下P57〜58より引用)


 無限音階のごとく、上昇が続く。
 揺れる。
 ふわっとバウンドするかと思えば、がたがたがたっと揺れる。
 揺れる。
 沈み込んで浮き上がったかと思うと、がくがくと揺れる。
 揺れる。
 あのう。アルバートさん(←機長の名)。なんでこんなに揺れるんでしょう。
 やっぱり揺れる。
 ねえ、アルバート。いやよいやいや、こんなに揺れちゃいや。
 しつこく揺れる。
 おい! アルバート! なんでこんなに揺れるんだよっ。もう飛び立って三十分近く経ってるじゃねえかよっ。
 まだ揺れる。
 アルバートっ。下手糞っ! 帰れっ(てどこに)。



テンションの上がり具合が赤裸々に綴られたこの部分は何度読んでも涙が滲んできます(笑い過ぎで)。手に汗握る緊張感を共に味わっていた為、飛行機が無事ヒースロー空港に到着した時にはこちらも胸をなでおろしてみたり。
現地に着いてからは恩田さんが考えた事、創作の裏話、新作についてちょっと垣間見せてくれる断片などなど、恩田作品のファンには嬉しくなるような文章もございます。次の理瀬シリーズは英国が舞台になるらしいとかね。
ワタクシは『ネクロポリス』を凄く読みたいです。早く出版してくれ!
それにしても恩田さんこの本の中で絶えずビールを飲んでらっしゃいますが、描写がなんとも美味しそうなので下戸のワタクシもちょっと飲んでみたくなりました。


旅行記としては正直もうちょっと書き込んで欲しいなとも思いますが(←何様か)、エッセイとしては楽しめました。

乙女なげやり(三浦しをん)

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『乙女なげやり』
三浦しをん 著、太田出版 刊


三浦しをんさんの著作は『月魚』『私が語り始めた彼は』しか読んだ事がありませんでした。2冊を通じて受けた印象は、端正な文章を書く確信犯的なクレバーさを持った作家だったのですよ。
ですが。
その印象は見事なまでに裏切られました(笑)。こーんな面白い方だったなんて!
ジャンルで云えば身辺雑記エッセイですが、一篇一篇が破壊的な爆笑を呼びましてねぇ。自室で烏龍茶を飲みつつ読んでいましたが、飲んでいた烏龍茶を鼻から吹き出しそうになりましたさ。通勤通学時の電車やバスの中、病院の待合室など、人目がある所では読まぬが吉です。
バクチクのライヴに情熱を燃やしたり、マリリン・マンソンのステージを楽しんだり、哀川翔兄ィを応援したり、少女漫画について真剣に語ったりと、どのページをめくっても大笑いできる事受け合いなのですけれど、類は友を呼ぶのか家族や友人とのやりとりがおっかしいのなんの!
一例としましては、三浦さんの友人が彼氏を物の見方が柔軟になるように教育していると云う話。具体的にどのような教育なのかしら?と読み進めて行きますと。
(以下P51〜52より引用)


「たとえば、『松井とイチローの直接対決』って近頃騒がれていたでしょ? 彼と一緒にテレビを見ていたら、ニュース画面に『松井×イチロー』って出たのよ。そうしたら彼、ビクッとして『うお、驚いたぁ! 一瞬、松井とイチローがそういう関係になったのかと思った。ああー、エグいこと考えてしまった……』って」
「……それでいくと、松井が攻なのか」
(中略)
「あ、もしかしてしをんちゃんも不満? 私も、即座に『何馬鹿なこと言ってんのよ! そのふたりだったら、イチローが攻に決まってるでしょ!』と懇々と説いてやったわ。彼は『イチロー×松井! ああ、駄目だ、それはいくらなんでも俺の想像力の限界を超えてる……』とうめいてた」
「なんでかしら。松井さんが受のほうがまだしもしっくりくると思うんだけど……って問題はそこじゃないでしょ。『教育』ってあなた一体彼氏にどんな教育を施してんのよ!
(略)
ってな会話で盛り上った後、別の友人に件の話をした所、松井ファンの彼女は答えて曰く、
「あのなんとなく流されやすそうな松井さんが、自分から積極的に動くわけがありません。反対にイチローは、『鬼の一念岩をも通す』って感じの意志の人じゃないですか。それは絶対にイチロー×松井で決まりですよ!」


と論理的に分析してくれるのです。ああ、なんと美しい友情なのでしょうか。
また別の友人との話では、三浦さんが盲愛(爆愛か?)するヴィゴ・モーテンセンとのラヴ生活(妄想暴走気味)をメールで送りつければ、佐藤浩市との脳内「冬の京都不倫旅行」を返してくれるのです。ああ、なんと麗しい(以下略)。その素晴らしさには笑い涙が溢れて止まりませんでしたヨ……(笑い過ぎで悶死寸前)。
ヴィゴ語りと財前語り(「白い巨塔」の財前教授ですな)に関してはもはや職人芸の域です。お見事!(拍手)
話題の広さと語りっ振りの小気味良さには脱帽ものでした。スカッと笑いたい方にはお薦め致しますよ〜。

燈火節 (片山廣子/松村みね子)

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就寝前に『燈火節』を少しずつ読んでいます。
分厚いので持ち歩きに不便だからと云うのもありますが、一度に読んでしまうのも勿体無いので。
アイルランド文学に関する事から日常の細々した事までふくよかな筆で綴られている随筆でして、知的でいながら感性の柔らかな方の書かれる文章はやはりこの上なく美しいなぁと思いつつ、ちびりちびりと味わって読み進めています。
書かれた時代は勿論片山廣子(=松村みね子)の方が先んじてはいるのですけれど、向田邦子さんや須賀敦子さんの文章を読んだ時に感じる背筋が伸びるような清々しさがあるのですよ。こういった良い本が新刊書店で買えるのは本当に嬉しい事だと思います。
かなりお高い本なので「絶対買うべし!」とは申しませんが、手に取る機会があれば是非どうぞ。お薦めです。
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