
『図説 西洋騎士道大全』
アンドレア・ホプキンス 著、松田英・都留久夫・山口恵理子 訳、東洋書林 刊
英語で「騎士道」を表す言葉は“chivalry”と“knighthood”の二種類があるのだそうです。
その違いはと云うとフランス語源の前者は理想的な(文学的な)騎士道を表し、後者は実際の階級社会(封建制度)においての騎士道。どちらかと云えば歴史的な用法で使用されるそうです。
この本では騎士の発展から衰退までを歴史的記述だけでなく文学作品からも例を挙げて説明しています。騎士を中心とした中世の歴史を概観できるのも興味深いのですが、実際の騎士とその言動に文学が与えた影響についても語られており、歴史と文学の関わり──云わば“chivalry”と“knighthood”の両方を描いている点で貴重な本だと思います。
読み物として面白いのは勿論ですが、図版の充実振りには脱帽。
甲冑の図版を例に取りますと、11世紀から16世紀の騎士たちの姿を並べる事によって、鎖帷子中心の初期の鎧から強度の高い板金鎧へと改善・変化していく様子や、実用性から装飾性重視に移行していく様子などが眺めているだけでわかります。
そのほか、城郭の写真や平面図、写本からの美しい図版の数々、歴史地図(13世紀ヨーロッパの地図や十字軍関連の地図、ジェラルド・オブ・ウェールズの十字軍勧説の旅程地図まで載っていたのには感動)など貴重な資料が一冊にまとまっている為、図書館で借りるだけでは飽き足らずに結局自分でも購入してしまいましたよ(笑)。なんて罪作りな本なのか!
これを持ってヨーロッパの城や博物館を巡ったらさぞかし楽しいだろうな〜。
騎士に関する様々なエピソードを簡潔にまとめてあるコラムも非常に面白いです。本来このコラムひとつのテーマで一冊の本が書けるのでしょうね。
個人的に一番興味を持ったのは紋章に関するコラム「紋章の役割」でした。
紋章に通じた式部官は紋章官と呼ばれるんですが、この紋章官は戦時においては伝令官や騎士の死者を把握する役割を持ち、平時のトーナメントでは儀式的な役割を担ったそうで、社交上でも重要な立場になった彼らは紋章学と云う学問を発達させて行きます。これに通じた人は楯に記された紋様から一族の歴史を解説できる程の知識を持っていたのだとか。
つまり、紋章官って知的エリートな訳ですよね。中世においては修道士の方が恐らく純粋な知的エリート(学者的な)かと思うんですが、騎士社会を舞台にしたミステリで紋章官が探偵役って作品があったら面白いのに!とか妄想(※以下追記にて)してしまいましたよ(笑)。どなたか書いては下さらぬものか。
ともあれ、中世ヨーロッパの歴史に興味のある方は必読の書かと思います。お薦め。











