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チェコの児童書の歩みと研究の今 (国際子ども図書館)

国際子ども図書館


↑国際子ども図書館入り口前。
携帯のカメラなんで画像が甘いのは御勘弁を。





「チェコへの扉─子どもの本の世界」の企画講演会「チェコの児童書の歩みと研究の今」を聴講してきました。
講師はチェコのマサリク大学の教員であり、チェコ児童文学研究者であり、国際児童図書評議会チェコ支部副会長のマルチン・ライスネル博士。
チェコ語の講演を駐日チェコ大使館翻訳官の村上健太氏が通訳するという構成でした。



割合専門的なお話が多かったのですが、興味深かったのが社会主義体制時の出版状況について。
当然ながら国家の許可の下で検閲を経て出版が行われる訳ですが、当時唯一の児童書出版社だったアルバトロス社の選択が良かった為、質の高い本が出版されていたとのことです。
芸術性の高い絵本が出版されていた時期は、通常の芸術作品に抑圧が加えられていた時期と同じなんですね。
社会主義体制が崩壊して後は自由な出版が許され、出版社も多数できたものの、質のよろしくない本まで出版されることになってしまったのだとか。
検閲が良いことだとは云えませんけれど、出版の自由が必ずしも良い作品ばかりを生み出す訳ではないのだなぁと感じました。
玉石混淆な時代にこそ、本の目利きの存在が大切なんですね。


最近出版された絵本の画像も見せて戴きました。
色々と素敵な本が紹介されていて、今すぐチェコに行って書店の絵本コーナーで手にとって眺めてみたくなりました。
たぶん好きな作家の新作も出ているんだよなぁ(レナータ・フルチーコヴァーの新作がチェコの王と貴族についての本みたいだったし)。
しかし、飛行機の油代(燃料サーチャージ)が下がらんことにはビンボー人には手も足も出なくなっちまいましたよ海外旅行……(涙)。
こんなことなら去年チェコ行った時にもっと本を買ってくれば良かった!!!と今更ながら後悔しきり。
ああ、プラハのヴァーツラフ通りの大型書店に行って本を漁りまくりたい!!



シュマレッツ abecedabook


↑このシュマレッツのアルファベット本も紹介されてました。
目黒の展覧会の時に買い逃して、チェコ旅行の際に買ったもの。
2005年の「チェコの最も美しい本」児童書部門受賞作品。
これ日本語に翻訳されれば良いのになぁ!


チェコへの扉─子どもの本の世界─ (国立国会図書館 国際子ども図書館)

チェコセンター所長のペトル・ホリーさんの講演会「チェコの子どもと読書」を聴講できることになったので、上野にある国際子ども図書館の展示「チェコへの扉─子どもの本の世界─」を見学してきました。
数ヶ月前から行こう行こうと思っていたのに結局他の用事がないと行かないものですなぁ。
ただ、国際子ども図書館はとても好きな場所です。
とても素敵な明治建築なので!(鼻息)
いやもう、一日ずっとこの場所に居なさいと云われればだらしなく顔をゆるませたまま建物中を徘徊できる自信がありますよワタクシ!(←そんな自信は何の役にも立ちませんので押入れにでもしまっておきなさい)
毎週木曜の午後2時から建物の見学ツアーが行われているそうなので、いつか参加してみたいです。お休みを貰えたら行って来ようかな。




チェコへの扉


↑入り口そばに飾ってあったタペストリー(?)。
ここだけ写真撮影OKだったので撮ってみました。
チェコと云えばこれ!のマリオネットたち。
イラストはヘレナ・ズマトリーコヴァーのもの。
展示室の外でチェコの名所に関するDVD上映(チェコセンターの提供だったかな)もあります。通して観ても20分弱くらいなのでお時間のある方はこちらもお薦め。



展示は、チェコに関する本から始まって昔話や民話や童話、歴史物語、詩、児童文学、もぐら(っていうかミレルのクルテク特集)コーナー、カッパの特集コーナー(芥川の「河童」のスロヴァキア語訳本があってびっくりした……)、クバシュタの仕掛け絵本のコーナーもありました。
チャペック、ラダ、セコラ、トゥルンカ、パツォスカーなどなどの有名作家の作品は結構まとまった数の展示があって嬉しかったです。
ラダの手がけた本の装幀をずらりと並べたデザインのポスターの展示があって激しく欲しかったですよ(笑)。ラダのデザインが大好きなので〜。
新しい作家はピーター(ペトル)・シスとユライ・ホルヴァートくらいだったかな。
シュマレッツの本がないかなぁ〜とひそかに思っていたのですが、無かったのが残念。
残念ついでにひとことつまらぬことを。
普段目にすることの出来ない貴重な本がたくさん並べられていて眼福ではあったのですが、手に取って眺められる本の展示が何冊かあればなぁと思ってしまいました。
レアな本ではなくて(流石にそれは無理でしょうから)、現在も入手可能な日本語訳の本でいいので、めくって楽しむことができればもっと本の魅力が伝わるのになぁ〜などと思ってしまいました。
資料の盗難の可能性もありますから難しいとはわかっていますけどねー。
確か一階で展示資料の一部は閲覧できる筈なんですが、その場ですぐに見てみたいと云うか。まぁ単なるワガママと云ってしまえばその通りなんですけどね(笑)。


思っていたより長くなってしまったので講演会についてはまた別項にて。
講演会終了後に池袋パルコ別館B1にて開催されていた「Small Village of Czech Culture(スモールヴィレッジオブチェコカルチャー)」に寄ってきました。
期間は2008年4月25日(金)〜5月11日(日) 11:00〜21:00 なのでチェコ好きの方で池袋方面に御用事のある方は覗いてみては如何でしょうか。
ワタクシはついうっかり絵本の古書を買ってしまいましたヨ……。




絵本1



↑戦利品(?)
左側が「チェコへの扉」の図録。
普段は通販だけなんですが(会場に申し込み用紙があります)、イベントのある日は会場での直接販売がある模様です。版元(?)のお兄さんが手売りしてました。1500円ナリ。
右側は池袋で購入したチェコ絵本の古書。
「Kolo Radovanek」の1973年アルバトロス版(だと思う。奥付見てもチェコ語だからよくわからん……)。
ヤン・チャレックの詩とアドルフ・ザーブランスキーのイラストで構成されています。
民族衣装のお嬢さんと青年の絵に一目ぼれしてしまって、予算オーバーだったのに買ってしまったですよ(苦笑)。




絵本2



↑絵本の表紙と図録の裏表紙。
ネット古書店にアップされている画像を見ると表紙がカラーなので、本来はカヴァーがついているものなんでしょうね。本体の表紙は水色とグレーが基調になっていてこれはこれでなかなか可愛いからいいけどさ(負け惜しみ)。
図録は青と白と赤のチェコカラー(?)がセンス良く使われている素敵なデザインです。



ファンタジーの世界 (金原瑞人公開講座) その1

5月20日、6月3日の2週に渡って金原瑞人先生の公開講座を聴講してきました。


第一回目は英米文学のファンタジーについてのお話がメインでした。
時期的に(笑)ゲド戦記の話題が多かったです。
見出しは便宜上つけただけなので、講座の中で明確に区切られていたわけではございません。ワタクシが勝手につけただけ(苦笑)。
この記事長いのでいくらかでも読みやすくなるかな〜と思ったんですが、あんまり意味なかったかも……。






●まずはおおまかに「ファンタジー」について


大ヒット作品からのファンタジーブーム(今だとハリー・ポッター、1965年以降のアメリカだと指輪物語)によってファンタジーという言葉の定義に関しての変化が起こり、ブーム以前の定義ではリアリズム以外の作品に使われていたものが剣と魔法のハイ・ファンタジー的作品を表す言葉になったそうです。
O.E.Dやランダムハウスなどの辞書の定義によれば「fantasy」は異端小説のことで、かなり広範囲の作品を指すのですが、一般的なイメージとしては狭義の意味合いが流布しているとのこと。
ひと昔前の日本では幻想文学やホラーもファンタジーのくくりに入っていたそうです。
自分の中でも幻想文学はファンタジー寄りの認識に入っているのですが(好きな作品は全部ファンタジーに入れたがる傾向があるため・笑)、色々な人のファンタジーの定義やその人が考える代表作品に関してアンケートをとってみると曖昧模糊とした部分がはっきりするのかもしれませんね。どなたかやってみて下さい(笑)。
魔法ファンタジー全盛の昨今では回答の殆どがそういった方面に偏ってしまうのかもしれませんけど。





●創作民話と創作神話と英雄伝説


では、「ファンタジー」という言葉が使われる前の日本ではファンタジー作品はどんな風に呼ばれていたか。
例としてコロボックルシリーズで有名な佐藤さとる氏は自作を「創作民話」と称していたそうで、これを聞いて教室内に笑いが起こったんですが、よくよく考えるとこれってかなりしっくり来る言葉ですよね。
その分類法(?)で行くと、トールキンなどは「創作神話」の創り手にあたり、英米でファンタジーがさかんに書かれるのは神話の代替物としてではないかと先生は仰有られておりました。
アメリカではこの法則(?)は当てはまるけど、英国では違うんじゃないかなぁ。何と云ってもアーサー王伝説があるし……と思っていたらば、そんな心を見透かされたかのように(笑)、アーサー王伝説は伝説どまりであって神話ではないとのこと。
云われてみれば、アーサー王伝説は英雄譚であって神話ではありませんね。
聖杯のエピソードなどはキリスト教や異教的なものが関わってきますが、神の存在は他の国の神話に比べて濃厚ではありませんし。
アイルランドの英雄クーフーリンなんかだと神話に密接な関係がありますけど、超自然的な存在との関わりはあってもアーサー王と神って正面から論じられていないよなぁーと目から鱗が落ちました。
って私的な興味の向かいどころはさておき。
それでは神話とは何ぞや?
先生の定義を簡単にまとめると、権力のプロパガンダだったり、世界を構成する要素を説明したり理由付けたりするもの。このような考え方で行くと科学も神話のひとつになるのではないか。もっと未来になったら科学も時代錯誤な考え方になるって可能性もあるんじゃないかとも仰有ってました(笑)。





●ゲド戦記について


世界三大ファンタジーとしてよく名前が挙げられるのは「指輪物語」、「ナルニア」、「ゲド戦記」ですが、英米での評価は先のふたつが評価されていて、ゲドはそうでもないそうです。
日本ではゲドも同じ位評価されていますし、人気もありますよね。
で、ゲド戦記のどんなところが凄いのかと云いますと、
魔法において統御と抑制というルールを課し、世界の均衡を崩さないところに価値が置かれている点だそうです。


ここでちょっと脱線。
魔法使いを主人公にした話って思ったほどないよねってなお言葉がありました。ゲドやポタ以外で考えると、これが本当に思いつかない!(笑)
ってな訳で次回までの宿題として魔法使いが主人公の作品を考えてみましょうとのお達しが。





●ハイ・ファンタジーの楽しみ


指輪やナルニアをはじめとするハイ・ファンタジーでの面白さはどんな所にあるのかという話。
まずは世界構築の楽しみ。別世界を構築することによって、秩序や論理性といった世界のルールを明確にすること(しかしそれが勝ちすぎると説明され得るつまらなさにも通じてしまうのですが)。
フロドやペベンシー兄妹たちのように、子供(もしくは弱いもの)が世界を救うところ。
そう云えば皆選ばれた者の割に強大な力は持っていませんね。


プロイスラーの言葉によると、「ファンタジーは凧に似ていて、地上から離れていくとどんどん制御が難しくなり、糸が切れると破綻してしまう」そうです。印象深い言葉です(でもかなりうろ覚え……)。


あと、ハイ・ファンタジー以外でのファンタジー作品として挙げられていたのが、マーヴィン・ピークの「ゴーメンガースト」やダンセイニ作品。
全貌が見えてこないゴーメンガースト城の増殖する世界や、混沌性と曖昧さがある創作神話の「ペガーナの神々」の話が出ておりました。
カルヴィーノの話もこの辺りで出てたような。





●ふたたびゲド戦記


ふたたび「ゲド戦記」話。
アースシー世界で重要視されるのは均衡の概念であるというのは先にもレクチャーして戴きましたが、ここでは魔法と名前の関わりについてのお話がありまいした。
ゲドの作中での通り名と真の名前との関係はネイティヴ・アメリカンの部族における「名前=その人物」という考え方に大きく影響を受けているとのことですが、これは日本における言霊信仰とも共通性があり、単なる記号ではない名前の価値や言葉の力について忌み言葉の例を挙げて(櫛は十三、梨がありの実、猿はましら、蛇はくちなわ など)説明して戴きました。
言葉は常に変化していくものですが、昔の言葉に比べると今の言葉は記号化の一途を辿っているのかな〜などと思ってみたり。


あとは、ゲド戦記においての方向や数字について。
ゲドは1巻では東へ、2巻では同じ場所、3巻では西へ向かうんですね。
そういう仕込みがしてあるんならやっぱり三部作で終わらせておいた方が良かったのでは……(いらぬ世話)。
数字に関しては9という数字に含み(遊び?)があるそうで、ロークの長たちは9人、ゲドが魔法使いになるまでに要する期間が9ヶ月、ゲドの成長は9章分に渡って描かれ、エレス・アクベのルーン文字は9個なのだそうで。
この手の細かい仕込みは探せば色々あるらしいので興味のある方は調べてみると楽しいかもしれませぬ。


最後に、フロドとゲドの共通性について。
ふたりともマイナスになっていた世界をゼロに戻し、世界のバランスを修復する役割を持っているとのことです。
そういう風な比較も面白いですね〜。自分では考えた事がなかったので「ほほう!」と唸ってしまいました。




ってな感じで第一回は終了。
色々勉強になりました〜。


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