日々雑景
本や漫画や映画の感想に購入本のメモと雑記など

ジョン・エヴァレット・ミレイ展 (Bunkamura ザ・ミュージアム)

公式サイト


オフィーリアが久々に日本にやってくるてってんで、渋谷まで見にいきました。


実の所、英国旅行に行く度にテイト・ギャラリー(現在のテイト・ブリテン)に見にいっていたので、行かなくてもいいかな〜とか考えてもいたのですが、テイト行きに何度も付き合ってくれていた友人(美術にあんまり興味ナシ)からも「オフィーリア来るんだってね」と云われたので、やっぱ行っとくべきかと思い直しました。
旅行のこととか色々思い出して楽しかったのでやっぱり行って良かった!(それ何か違うから)
平日の夕方なのに結構混んでました。ミレイって人気があるんですねー。
「オフィーリア」の前にはそこそこの人だかりが常に出来ていて、なかなか独り占めできませんでしたが、やっぱりこの絵は存在感が他の作品と一線を画していました。
ぼやっと見ているだけで時間が経つのが早い早い。
そういや、テイトでもこんな風にぼんやりこの絵の前に10分くらい突っ立っていたっけなぁなどと思い出に耽る年寄りが約一名(苦笑)。
死ぬ前にあと一回くらいはまたテイトでこの絵に会いたいなぁとか考えてしまいましたよ。
美術館自体もとても素敵だし、好きな絵もたくさんあるしね。


あと、今回思わぬ個人的な再会があったんですよ。
今から10年前にスコットランドのパースという街を訪れたことがありまして、その街の美術館で見たミレイの次女メアリーを描いた「目覚め」という絵がこの会場に来ていたのです。
絵自体をとても気に入っていたので記憶が鮮やかだったこともあって、懐かしさで脳内がもう大変なことになってました(笑)。まさか日本でまた会えるなんて思ってもみなかったよ!


その他は、「ベラスケスの想い出」(幼い少女をマルガリータ王女風に描いた作品)や、スコットランドのアーカート城を描いた風景画「吹きすさぶ風にたちはだかる力の塔」、シェイクスピアの「尺には尺を」から構想を得たテニスンの詩を絵にした(ややこしい)「マリアナ」(閉塞した空間にいる女性がシャロッット姫とモティーフが重なるので好きなんです。憂鬱な気持ちにもなりますけど)などが印象に残りました。



美術展の感想としてはどうなのよという記事になりましたが(笑)、個人的には非常に楽しかったです。
10月26日までの開催となってますので興味のある方は是非!


でも図録の印刷がちょっと微妙だったのは哀しかったなぁ。
寒色と暖色の両方が使われているとどちらかに色調を合わせないといけないので印刷がとても難しいという話を以前聞いた事があるのですが、ミレイの絵って両方使ってるもんな……。



ブラティスラヴァ世界絵本原画展 (うらわ美術館)

絵本原画展看板 絵本原画展ポスター






うらわ美術館で開催されている「ブラティスラヴァ世界絵本原画展」を見学してきました。


上の写真左側は入口を入ってすぐに出迎えてくれたヨゼフ・ラダの絵の立て看板。顔を入れて記念撮影ができます。観光地によくありますが、美術展で見たのは初めてですよ!(笑)
右側の写真はエレベーター脇にあったタペストリー風の案内表示。
アリ・レザ・ゴルドゥジャンの『黒鉛筆と赤鉛筆』の挿絵が使われています。


この展覧会では、2005年に行われた第20回展の上位入賞作の原画が展示されています。
原画と出版された絵本とを見比べられるので、実物と印刷の色調の違いを楽しめました。
特に印象に残った作品は、
アリ・レザ・ゴルドルジャン(イラン)の『黒鉛筆と赤鉛筆』は油彩とコラージュで、絵の中に本物の鉛筆の一部が使われています。絵自体も素晴らしいのですが、このアイディアにも感心しました。
パヴィル・パヴラック(ポーランド)の『ヤユンチェク』はウサギ4兄弟の末っ子が活躍するお話。柔らかい色調とユーモラスで愛らしい画風が魅力的です。
パブロ・アマルゴ(スペイン)の『お姫さまとエンドウ豆』の挿絵は、原作がアンデルセンだとは思えないほどデザイン性が高くてスタイリッシュでした。古典的な童話に対してこういうアプローチの仕方もあるのだなぁ!とびっくり。
カレル・クヌート(ベルギー)の『悪女クヌート』は、この著者はブリューゲルに影響受けてるのかな〜と思っていたら、作品自体がブリューゲル(父)の作品を下敷きにしているそうです。話もちゃんと読んでみたいんですが、邦訳は出なさそう……。
アラン・ゴーティエの『私の“ロバの皮”』はペローの童話が原作。
少々不気味系ではありますけど、暗い色調と特徴的なデフォルメが面白くて素敵です。


日本人作家では酒井駒子さん、荒井良二さん、こみねゆらさん、長新太さんなどの作品が展示されています。
青山邦彦さんの『ドワーフじいさんのいえづくり』(あらすじだけ読むと、「船頭多くして、船、山に登る」ってな印象の話です・笑)と、おかねよしきさんの『よなかの さんぽ』が特に好みだったかな。


チェコ関連では、ヨゼフ・ラダのリトグラフがまとまって来ていました。
黒ビールの宣伝カードやわらべうたカードは復刻して販売して欲しいです!
ポスターも可愛いんだよね〜。
ヨゼフ・チャペックはケネス・グレアムの『たのしい川辺』の挿絵も描いていたのですね。
あと、今回初めて知ったツィリル・ボウダの作品群のユーモラスな魅力にすっかり虜になってしまいました。ボウダが手がけた本が欲しい〜!!


美しいチェコ絵本の古書やチェコの作家の邦訳作品(これも古書)の展示もあって、ガラスケースごしに装丁を眺めるのも楽しかったです。


展示の最後の方にあったお子様を遊ばせておくスペースにチェコのおもちゃがたくさん置いてありましたけど、あれはひょっとしてここの木のおもちゃかな?
ワタクシがプラハで「欲しい欲しい!!」と騒ぎつつ諦めた懐かしいおもちゃがいくつか並んでいたもので(いや、木のおもちゃは自分用に三つ首のドラゴンを買ったんですけど、ひもでひっぱるあひるのおもちゃとかも欲しかったので……)。


時間がなくて全体的にゆっくり見られなかった(時間がないのにも関わらず、ついうっかりラダとチャペックのアニメを観てしまったせいもある・笑)のでもう一回くらい行きたいです。
リピーター割引(観覧済みの有料チケットを提示すると団体料金に割引してもらえるのです)が使えるのでまた行こうかな〜。


浦和駅周辺も昔ながらの商店街が残っていて歩いているだけでも楽しかったです。
あと、どこに行ってもレッズ一色なところがスバラシイね!(笑)



美術展メモ

若冲と江戸絵画展(→公式サイト
2006年7月4日(火)〜8月27日(日)
まもなく開催。来週か〜。



世界遺産ナスカ展 特別展 (国立科学博物館)

公式サイト




ワタクシには珍しくなんと初日に行ってまいりました。午前中に行ったのでそれほど混みあっていなかったので一安心。
それにしても、地上絵なんて日本に持ってこられないものをどうやって展示するのさ?とか思っていた訳なのですが、風習を紹介しながら知識の外堀を埋めていくような構成が良かったと思います。
土器は模様のひとつひとつがデザインとして心惹かれるものが多かったので見ていて凄く楽しかった!
もともと彩色が華やかなので見栄えがするのに加えて、描かれている模様がユーモラスだったり、細かい所まで色々描き込まれていたりして、レプリカを欲しくなってしまいましたよ。ヌートリアだかカワウソを描いた壺や、魚の頭が飛び出たデザインの凝ったつくりの皿(同行の友人は「アジの開き」と名づけて愛でておりました)、キツネの水差し(壺?)、ひとりでいくつもの楽器を操る楽師(シャーマン?)の像(ひとり楽団とか勝手に呼んでました・笑)あたりがお気に入り。
そうそう、展示品の装飾の解説で正体のわからないものは殆ど「超自然的生物」って感じの説明がなされていて、これがちょと笑いのツボに入りました。あとはネコと説明されているものの殆どがネコに見えなくて、同行の友人と「どこがネコなんだ?」と盛んに突っ込んでいたのですが、どうやら横に長いヒゲを持つ生き物(?)を殆どネコ扱いしている様子。ネコ耳じゃなくてネコヒゲなのかよ!(笑)とカルチャーショックを受けましたです。
マントなどの織物類も色彩が美しかったなぁ。砂の大地でこれをまとっている人の姿はさぞ鮮やかでしたでしょうね。


肝心の地上絵関連の展示に関しては、ナスカの砂や、大きなジオラマ(一日の移り変わりを明るさで表現していて、夜明けから朝、昼、夕方、夜とちゃんと時間が移り変わっていくのです)の展示があったり。このジオラマを見ると、マリア・ライヘが作った見学用の塔ですらほんの小さなものに過ぎなくて、ナスカの砂漠の広大さとそこに描かれた地上絵のスケールの大きさを感じる事ができるようになっています。
地図パネルでの地上絵の分布図も良かったな。それぞれの位置関係が一目でわかるようになっていて親切なつくりでした。
最後に見たVRシアターでは大画面でセスナ機視点での地上絵を見られました。今まで平面図でしか見た事がなかった地上絵を、地形に描かれた形で眺められるのが面白かったです。フクロウ男の絵は斜面に描かれていた事を不勉強なワタクシはこのシアターで初めて知りました。
ちょっと残念だったのは、大好きなサルの絵がこの映像では見られなかったことですけれど、わがままを云い出したらキリがございませんからねぇ。でも残念(涙)。


何のために描かれたのかその目的が未だに解明されない地上絵ですが、謎が解けないからこそ、その魅力はたくさんの人々を惹き付けてやまないのだなぁと思いました。極端な所では宇宙人説なんてのもありますけれど、古代の人々が地上に印した絵と云うだけで自分にとっては充分魅力的です。
学者の方々の様々な説も面白いのですが、ローズマリー・サトクリフの書いた『ケルトの白馬』のように、ここで起こったもしれない物語を読んでみたいです。どなたか書いて下さらないかしら。


最後のショップではナスカ地上絵マップとポストカードを買いました。民芸品の展示販売や関連書籍の販売も充実していましたよ。
マップには旅行案内と地上絵の分布図、図案の解説もあって地図なのに読む所がたくさんあって楽しいです〜。中身を見ないうちはフルカラーでも1000円はちょっと高いかな?と思いましたが、壁に展示してあった見本を眺めて購入決定。
部屋に図録を置くスペースが無い方にはお薦めですよ!(笑)

ミヒャエル・ゾーヴァの世界展 (銀座松屋 大催場)

オンライン書店ビーケーワン:ミヒャエル・ゾーヴァの世界 オンライン書店ビーケーワン:ゾーヴァの箱舟 オンライン書店ビーケーワン:クマの名前は日曜日




行って参りました。平日夕方だってぇのに結構な人出でびっくり。初日だったからかな?

デパートの催事場が会場だしそれ程規模が大きい展示ではないだろうなと思っていましたが、これだけの数(約130点)が展示されるとは凄いです。未発表作品も多かったようですが、ゾーヴァ作品を全て把握している訳ではないので価値がわかってません。すいません……。
『キリンと暮らすクジラと眠る』『ちいさなちいさな王様』『エーリカ』『魔笛』『エスターハージー王子の冒険』などの代表作の中からの展示でしたが、絵本で見るのとはやっぱり違いますね。
青と緑の中間色は印刷よりも美しかったですし、ブタさんのピンク色はやはり原画の方が素晴らしくキュートです。ゾーヴァの描く動物ではクマが一番よねぇと思っておりましたが、ここでの展示を見てブタ派に寝返りましたよ(笑)。「高速豚」の弾むような愛くるしさにはノックダウンされましたし。
ブタさんと云えば、映画「アメリ」で使われたブタのランプの展示もございました。これすっごく可愛くて!!!
いやもう、これレプリカ作ったら凄く売れると思うんだけど何故作らないのか?と思いましたよ。
『魔笛』収録の作品では夜の女王の登場シーンの挿絵(夜の色使いが神秘的で素敵)、『クマの名前は日曜日』の表紙画(実は一番これが見たかったのです。来てくれて嬉しい〜)、『キリンと暮らすクジラと眠る』のクマと女の子が川辺を歩いている絵、「猫の皮はぎ屋『ナウマン』」(何となくマグリットの絵を連想しました)、「二月」、「夏の終わりのメランコリー」(シェパードの表情が好き)あたりが印象深かったです。


しかし中でも一番インパクトがあったのは「ベックリン第六バージョン」と云う絵。
アルノルト・ベックリンと云う画家の「死の島」のパロディなんですが、元の神秘的で陰鬱な雰囲気を覆す絵でした。だって舟が転覆しそうになってるんですよ!(笑) 
絵の前で噴き出しそうになりました。意外とお茶目さんなんですかねゾーヴァさん。
あと、映画「ウォレスとグルミット」の最新作のイメージ画も来ておりました。野菜畑の絵と舞台になる邸宅(レディ・トティントンのお邸)の絵。
これがどんな風に使われるのかな〜と映画を観るのがますます楽しみになりました。早く公開されないかしら。そしてニック・パーク来日しないかしら(ゾーヴァさんと関係無いし)。


会期が短いのが残念ですが、ゾーヴァの代表作と云える作品が揃っているので熱烈大ファンの方は勿論、好きな絵本がある方は是非どうぞ〜。

ギュスターヴ・モロー展 (Bunkamura ザ・ミュージアム)

前期展(8月9日〜9月11日)と後期展(9月13日〜10月23日)とでは水彩画の展示作品が違うとの事で、取りあえずは見たかった作品の多い前期展へ。
お目当ては「ケンタウロスに運ばれる死せる詩人」。体から魂が去ってしまった詩人をうなだれながら支え運ぶケンタウロスの姿にチラシを見たときから心惹かれておりましたが、実際に見てみると男性にも女性にも思える詩人の優美さ(あるいは詩そのものの具現なのかもしれません)と深い哀しみを堪えているかのようなケンタウロスの静かさに惹き付けられました。
同じエリアでもうひとつ惹かれたのは「声」と云う作品。リュートの様な楽器を持つ女性の後ろの夢見るような表情をした天使が印象的でした。
油彩画では「サッフォーの死」の東洋的な雰囲気の鮮やかさに驚きました。身投げ直後のサッフォーを描いたこの作品、なにやら天女が空を舞っているかのようにも見えて悲壮さは感じられず、むしろ地上世界の様々な軛から解放されて自由な世界へと飛び立っていくような気さえしてしまいました(※ほぼ妄想)。
モローと云えば何と云っても「サロメ」で有名ですが、今回は素描や習作が数多く出品されていまして、大作が出来上がるまでの過程が伺えたのも興味深かったです。特に良かったのは1876年頃のサロメの素描。油彩画では何ともつかみ所がなく謎そのものの様な女性になっているサロメが、こちらの素描でも謎めいてはいるものの不思議と穏やかな表情を浮かべています。妖しさよりもむしろ清楚さを連想させられました。サロメの魅力の多面性の一部を現しているように思えて、個人的には油彩の大作よりもこちらの素描の方が好み。
油彩画では「エウロペ」あるいは「エウロペの誘拐」や「一角獣」(装飾部分が浮かび上がるように描かれているのに見入ってしまいました)、まさか来るとは思っていなかった「人類の生」の作品群も素晴らしかったです。


前期展だけでもかなり充実した展示でしたが、できれば後期展にも足を運びたいと考えています。時間が取れたら行きたいなぁ。

ドレスデン国立美術館展─世界の鏡 (国立西洋美術館)

混まないうちに〜とさくっと行って参りました。平日にも関わらずそこそこの人出でしたよ。
普段は絵画中心の展覧会に行く事が多いので、色々な美術品を見る事が出来て楽しかったです。面白いものをたくさん集めてくれて有難うアウグスト強王!(←いや別に彼ばかりのお蔭でもないから)


場内は7つのセクションに分れてまして、まず第一セクションは「ドレスデンの美術収集室(クンストカンマー)」という科学計測機器を集めたエリア。
入口にどどんと置いてあるペーター・ヘーゼ作の集光鏡の大きさ(直径が確か140センチかそこらあったような)にまず驚きました。裏の太陽の装飾がユーモラス。デューラーの星図、ヨハネス・プレトリウス作の真鍮の地球儀、その他天球儀や四分儀も興味深かったです。自動人形時計「馬に乗るトルコのパシャ」は動いている所を見たかったなぁ。
続く第二セクションは「オスマン帝国─恐怖と魅惑」。トルコに関する展示がメイン。
ここでは鎖帷子が見られましたよ〜。おおう、生鎖帷子!と盛り上るも、やっぱり実際に人が着用している所を見たいものですな。因みに、本家のドレスデン美術館には大規模な甲冑コレクションがあるのだとか。映像で見ただけでもお腹一杯な感じでしたよ!
トルコ石の装飾が鮮やかな剣や短刀、戦闘槌などは儀礼用なのかな。随分と華奢な感じでした。実用には耐えなさそうだ。
第三セクションは「イタリア─芸術の理想像」。イタリア絵画の目玉は何と云ってもティッツィアーノでしょう。「白いドレスの女性の肖像」が来てました。でも実はティッツィアーノよりも印象に残ったのは、カナレットの「ヴェネツィア、サン・ヴィオ広場とカナル・グランデ」と云う絵でした。運河と広場の賑わいが伝わってくるようで見ていてとても楽しかったので。
第四セクションは「フランス─国家の表象と宮廷文化」。
ローズカット・ダイヤモンド装身具一式のきらびやかさにクラクラ(笑)。この中にレイピアがあったのですが、本当に凄く細身の剣なんだ!と実物を見た事がなかったものでびっくり。
第五セクションは「東アジア─驚嘆すべき別世界」。
中国と日本の陶磁器とマイセン磁器が中心でしたが、元になる中国や日本の磁器とマイセンでのコピーを並べて展示してあるのが面白かったです。
マイセンも単体で見れば非常に綺麗なのですが、流石に東洋の磁器に比べると繊細さに欠けると申しますかどこか大味な気がします(笑)。
このエリアで好きだった展示品はマイセンの「蛙足花器」。伊万里を模したような花瓶の下に蛙が載った土台が付いているのですが、これが気持ち悪くて可愛いのですよ〜。波津彬子さんの「雨柳堂夢咄」に出てきそうな感じ(マイセンじゃ出てこないかな)。夜中に蛙たちがここから抜け出してゲコゲコ鳴いてたら楽しそう〜とか想像してしまいましたよ(いやそれ妄想だろ)。
第六セクションは「オランダ─作られた現実」。
ようやくフェルメールの登場です。「窓辺で手紙を読む若い女」にはたくさんの人が立ち止まってました。
光の描き出すふくよかな陰影と無駄の無い構図の緻密さが素晴らしいなと思います。やはり惹きつけられますね。写真では捉えきれない微妙な色彩を堪能致しました。
後はヘルブラント・ファン・デン・エークハウトの「天国の梯子についてのヤコブの夢」も好き。見返っている天使様の表情がミステリアスで魅力的だー。
最後の第七セクションは「ロマン主義的世界観」。ドイツ・ロマン主義の絵画はツボ直撃でしたよ〜(喜)。
月が好きなもので、画面に月がある絵だと途端に点が甘くなってしまうのですが、ヨハン・クリスティアン・クラウゼン・ダールの「満月のドレスデン」は夜景そのものが美しいのは勿論、川面に映った月の光の美しさにうっとりしてしまいました。その他、「サレルノ湾の月夜」(海が不思議な色合いでした)、「月を眺める2人の男」(ねじくれた木の枝の向こう側に細い月が光を放っている様子をふたりの男が眺めているのですが、この構図も素敵)、カール・グスタフ・カールスの「音楽」(バルコニーに置かれたハープを天使が鳴らしている絵。夜の音楽の密やかさを感じます)あたりが好き。貰えるもんなら全部戴きますよここの絵!(誰もくれるなんて云ってません) 
しかし、このエリアで一番心惹かれたのはエルンスト・フェルディナンド・エーメの「霧中の行列」と云う絵。霧の中を黒衣の僧侶達が歩いていて、彼らの先頭は霧の中に消えてしまっています。
彼らは何処から来て何処に行くのか。果たしてこの光景は幻影なのか現実なのかと妄想がどんどん膨らんで来ましてねぇ。
画面左端に橋が描かれているのですが、この橋は此岸と彼岸を分けていて(※この時点では宗教が違っている事に気が付いていないワタクシ。キリスト教の国の絵に仏教用語を使ってどうするのだ)、どう見ても橋を渡っちゃってるから彼らはこの世の人ではないのかしら〜と好き勝手な想像を(無駄に)働かせて参りましたよ(←作者に謝って下さい)。
全ての展示品の中で最も印象深い作品だったのですが、ワタクシが心底気に入った作品って大抵絵葉書にはなってないんですよねぇ(落涙)。
この作品も勿論なってませんでした。だからと云ってこの為だけに図録(2500円)を買う気にもなれず(貧乏なので)他の絵葉書を買って帰りましたが。


そんな泣き言はさておき、様々な作品を見る事が出来る充実した展覧会でした。じっくりゆっくり楽しめますんで、2時間くらいは見学時間を取っておくと余裕があって良いかもしれません。
行こうかなと思ってらっしゃる方は夏休み前を狙った方が無難ではないかな〜と老婆心ながら申し上げておきます(混んでなかったらすいません。でもNHKの「日曜美術館」で取り上げられる前に行った方が良いかと思いますよー。個人的に何度か泣きを見てるので)。

ベルギー象徴派展 / Bunkamura ザ・ミュージアム

5月31日に見てきました。
目当ては勿論クノップフの作品でしたが、今回初めて見たクノップフの師匠にあたるグザヴィエ・メルリの作品も興味深かったです。
特に印象に残ったのは「扉」という絵。
開かれた扉のみが描かれている絵なのですが、何か物語が始まりそうな雰囲気の絵だったように思えました。中にいた人物が出て行った後なのか、それともこれから入って行くのかとか色々考えてしまいます。(←妄想もたいがいにしとけ)
「ベギン会修道院」の静謐な雰囲気も素敵。
クノップフの風景画の佇まいは師匠の作風の影響を受けつつも、やはり独自のものなんですね。
彼の描く場所は実在の土地であっても幻想の場所となっています。
人の存在が全く感じられない廃都もしくは死都と云った風で、そこがちょっと怖くもあり魅力的でもあるのですけれど。静まり返った運河を描いた水の風景にも引き込まれてしまいそうな誘惑を感じます。
人物画では「蒼い翼」、「アクレイジア」と「ブリトマート」(スペンサーの『妖精の女王』から)、「メリザンド」が良かったです。
特に「蒼い翼」での青には魅了されました。もともとクノップフの青の使い方は好きなのですが、これはもう別格。生で見る事ができて嬉しかったー。
そうそう、「アクレイジア」は生で見たらもっと官能的かと思ったらそうでもなかったな。流石はクノップフ、女性の裸像を描かせても中性的だ〜と間違った感心の仕方をしてしまいましたよ(笑)。

他にはジャン・デルヴィルの「栄華を司る天使」、「死せるオルフェウス」、「赤死病の仮面」、レオン・フレデリックの「聖三位一体」あたりが印象的に残りました。
あと、ヤン・トーロップの絵(「二人の女」)も一枚だけ来ていて嬉しかった〜。図案化されたような曲線の使い方がたまらなく好きなんですよ。

ジョルジュ・ド・ラトゥール展 (国立西洋美術館)

読売新聞のラ・トゥール展ページへ。


もうちょっと早く行っておきたいなと思いつつ出遅れました。
ああ、せめてNHKの「日曜美術館」で放映される前に行きたかったよ……。おまけに美術見学の学生さん達とかち合っちゃって館内が結構ごたついてましたし(涙)。
せっかく平日に見学を当てたのにさぁ!って愚痴はともかく。


光と闇のコントラストで表現された画面にはやはり惹き込まれました。
蝋燭の炎が照らし出す光と影が何とも云いようのない美しさを醸し出しているのですね。
フェルメール(実際の作品は見た事はありませんけども)が明るい中での微妙な光の色彩を捉えてカンバスの中に描き出した画家ならば、ラ・トゥールは闇の中の陰影を巧みに描き出した画家なのかなと感じました。
一番印象に残ったのはやはり「聖ヨセフの夢」の神秘的な天使の姿でしょうか。蝋燭の光の中に浮かび上がる天使は神々しくもあり、慈愛をたたえているようでもあり。いつまでも眺めていたくなるような魅力的な作品でした。実際15分くらいはこの絵の前にいましたよワタクシ。
晩年の作品と伝えられている「荒野の洗礼者ヨハネ」や、「書物のあるマグダラのマリア」も良かったです。
面白かったのは彼の作品に登場するヴィエル(ハーディーガーディー)という楽器。
手回しヴァイオリンとでも云ったらいいのでしょうか、この楽器の形態がなかなか素敵だったので音色を聴いてみたいものだと思っていましたら、ちゃんと売店でCDが売られてました。商売が上手いな、西洋美術館(笑)。欲しかったけど買いませんでしたよ。でも手に取っている方は結構多かったな。
あと、入口で上映されていた資料映像(15分くらいだったか)はなかなか面白かったので、お時間の余裕がある方は観ていかれると理解が深まって宜しいかと思います。ラ・トゥールの作品や歴史的背景に関しては勿論、フランスの風景も美しく撮られているのでお薦め。


参考作品として展示されていたジャック・カロのエッチング(「キリスト・マリア・使徒立像」が好き)も興味深かったのですが、館内の照明が暗かったので、目には優しくなかったです…。細かい部分を眺めるにはあの照明は不向きだ。




常設展示の方ではドイツの画家、マックス・クリンガーの版画展も開催されていたのでこちらも見学。
連作《イヴと未来》の中の第1葉「イヴ」、連作《ある生涯》の第3葉「夢」(ポスターにもなっていました)、第4葉「誘惑」が気に入りました。こちらの図録も作って欲しかったな。
こういった妖しい官能を描いた作品がワタクシのツボなのですよ。
そして、常設展に来たついでに久し振りにロセッティとモローとフューズリも見てきました。結構良い作品を所蔵してるんですよね、西洋美術館って。
良いものがたくさん見られて幸せな一日でした。

美術展メモ

プランタン=モレトゥス博物館展 グーテンベルクからプランタンへ(印刷博物館)
7月24日(日)まで。


ジョルジュ・ラ・トゥール展(国立西洋博物館)
5月29日(日)まで。
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