「神はなく、熱が下がったのも偶然ではなかったのか」
私は精一杯皮肉な口調で言った。
「神はないが、主はいる」
「私はお前の主人ではない」
老人は平然と顔を上げた。私の動揺になど興味がないようだ。
「誰が主か、わしが決める」
白い髭の中で爺さんはにたりと笑った。
「決めた」
(同書 P122〜123 「波山の街 ─ 『東方見聞録』異聞」より引用)
感想はこちら。
『黎明に叛くもの』の外伝をまとめた短篇集。もともとは分冊ノベルズ版の書き下ろし作品だそうですが、戦国時代に関する基本的な知識があれば『黎明に叛くもの』を読んでいなくても伝奇的な戦国時代物として楽しめると思います。
収録作品は「隠岐黒」「天王船」「神器導く」「波山の街 ─ 『東方見聞録』異聞」の4篇。
短いながらどれも印象的な作品なのですが、秀吉の「中国大返し」の裏事情を描いた「神器導く」とマルコ・ポーロの最後の語りである「波山の街 ─ 『東方見聞録』異聞」が面白かったです。
『信長 あるいは戴冠せるアンドロギュヌス』、『聚楽 太閤の錬金窟』ときて、『黎明に叛くもの』から『安徳天皇漂海記』への流れが一望できる作品集になっているのも興味深いです。信長から松永久秀とイスラムの暗殺教団、マルコ・ポーロと元寇へゆるやかに繋がっていくのだなぁ。









