
『箱はマのつく水の底!』
喬林知 著、角川ビーンズ文庫 刊
「それはさー、健ちゃん」
爪の短い人指し指で、小児科医は眼鏡を押し上げた。流行遅れのフレームが鼻からずり落ちかけている。
「愛ある家庭を諦めてでも、手に入れたかったものなの?」
「そうだよ」
つられて自分も眼鏡を押さえながら村田は頷いた。
「そう、今度こそ手に入れたかったんだ。別に新しい魔王が欲しかったわけじゃない。何もかも話せる相手が欲しかったんだ。隠し事をしなくても済む仲間が、友人が欲しかった」
心を開こうとしなかったフランス人も、記憶を認め追及しようとしなかった可哀相な娘も、得られなかったもの。
「僕はずっと渋谷有利が欲しかったんだ」
自分はそれを手に入れた。
「今が一番幸せだよ」
だから絶対に失いたくない。誰を敵に回しても。
(同書 P35〜36より引用)
シリーズ本篇13冊目。
えーと、またとんでもない所で終ってるんですけど…………(落涙)。
前巻でとんでもない事が起きちゃったショックから立ち直れないのはユーリも読者も同じかと思いますが、そこにサラレギーが追い打ちかけてくるしなぁ……。安心できる箇所もあるにはあるのですが、それだけじゃ足りないつーかさぁ。ああもう! うわーん!!(泣き伏し)
そんな中でもアチラさんの翻訳には笑わせてもらいましたよ。どうにもこうにも戸田のなっちの字幕翻訳を連想してしまうのよねぇ。「を?」とか「かもだ」とかさ(笑)。
今回はムラケン君の内面に枚数が割かれていたのが嬉しかったですな。やっぱし有利は愛されてるねぇ。でも健ちゃんもロドリゲス医師にめっちゃめちゃ愛されてるから! ドクターってば、村田母よりも慈母のようでありますな(笑)。
アンリ・レジャンの話がたくさん出てきたので、彼の事がかなり気になってしまいました。『お嬢様とは仮の姿!』の前後の話を読んでみたくなりましたよ。
あと、思ってた以上にグレイブス家の事情が込み入ってたのにはびっくり。
せっかく表紙に登場した勝利兄ちゃんですが、今回は活躍の場に恵まれず。
次回に期待していいのかなー?
同時収録は短篇「マ王陛下の花嫁は誰だ!?」
久し振りにぎゅんぎゅんの姿が見られたと思ったら、よりによって○○○姿かよ!(笑)と突っ込みを入れずにはいられませんでした。
でも、タイトル通りの展開ではなかったのはちと残念。












